奇跡の森 EXPO ’70 – 人工の密生林

奇跡の森 EXPO ’70Miracle Forest EXPO ’70

国立民族学博物館の 梅棹 忠夫 初代館長の「森創りは夢の苗床」の思想により、70年万博のパビリオン跡地が55年かけて美しい森に回復し生物多様性で人が憩える森になりました。当初はビジネスセンターになる構想でしたが、急速な都市化による環境問題への世論の高まりを受け、わずか3ヶ月で政策が変わり「緑に包まれた文化公園」になり55年にして「奇跡の森」と呼ばれています。

国連のSDGsは2015年の宣言ですが、その45年も前から人工の森創りが始まりました。森の大きさはセントラルパークと同規模で市民の憩いを大切にした 日本の都市公園の先駆けです。設計は日本を代表する造園家の 吉村 元男 氏で、外周の密生林と中心の芝生広場には標高差15mをつけ、高速道路の騒音や排気ガスを防ぎ、美しい自然と生物多様性と人が憩う人工の森が初めて創られました。この森は日本の財産を超え100周年目には「世界遺産」をめざす地球の財産にもなります。

これ程のレガシーが今の日本の多くの人々に忘れられていることに驚き4年かけて撮影しました。ネイチャーポジティブ「森を守り自然の回復をめざす」ことは世界共通の大きな目標ですが、長い年月をかけ自然の生命力と人間が介在する継続した努力がとても大切と実感しています。

今年は再び「日本万博」が開かれていますが、「大きな忘れ物」を未来への糧にできればと思い、写真集『奇跡の森 EXPO ’70』にまとめました。展覧会では 芸術系だけに限らず自然や環境系の人々、NPOやNGOの団体、さらにSDGsの理念を経済活動の柱にしている企業などが報われ勇気づけられればと願います。

この「万博の森」が100年を迎える2070年、豊かな森になっているのか、今よりも痩せ衰えているのか、21世紀を生きる「日本人の肖像になる」と思います。

畑 祥雄
写真家・映像プロデューサー